中国書画伝来の歴史的経緯-2

更新日:2019年03月15日
呉昌碩(辮髪写真)と弊社刊「呉昌碩手札詩巻合刊」
 これらのコレクションのなかで幾つかの書画の名品は大阪市立美術館や和泉市久保惣記念美術館を始め、澄懐堂美術館、黒川古文化研究所、観峰館、泉屋博古館、藤井斉成会有鄰館、大和文華館などに所蔵されていますが、頻繁にお目にかかる機会は滅多になく、実質的にはデッドストックと言ってもよい状況でと言えるでしょう。
  この状況を一変させたのが最近10年くらいの間に、日本で急激に開催され始めた中国美術オークションや、東京美術倶楽部や大阪美術倶楽部などの即売会、さらに古美術商らの間で開催される古美術交換会などにおいて、明治以降の書畫売立目録や出版履歴のある個人コレクションの珍奇名品が一気に市場に出品されるようになったことです。長い時間をかけて蒐集した従来までとは違い、豊富な資金や確かな鑑識眼を持つ愛好家やバイヤーの元に集中して買い漁られるようになりました。
 中国書画は伝統を大切にし、過去を学びながら新たらしいものを生み出してきました。戦火や文革などをくぐり抜けて日本に伝来した長い歴史や文化財としての価値の高い名品は、多くの人を動かす力があると言えるでしょう。これら藝術品をより多くの方に知らしめるため、企画展、展覧会などで図録の出版、また美術家、書道家、愛好家を対象に、学ぶべき資料的価値の高いものについては様々な出版があります。かつては全数十巻といった大型全集や豪華本が中国同様、我が国でも行われました。
 しかしながら、1990年代後半から我が国は少子化、趣味の多様化に加え、活字文化の衰退、インターネットなどの普及によって美術系大型本の出版は完全になくなりました。書道人口の減少を目の当たりにし、書道出版社は倒産、撤退を余儀なくされましたが、展覧会の題材とするべき学書の対象である中国古典の重要性は変わりありません。
 将来、専門的に書を学び、論文発表する研究者や学者が「引用を避けて通れない出版物」を目指す弊社の経営方針に変わりはありません。
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