篆刻芸術と印材の名称-2
更新日:2020年04月15日
主だった印材を整理すると、
◇青田石…中国浙江省青田県産で、主成分は葉ろう石。「燈光凍」、「魚脳凍」と名づけられる上質なものから、練習用とされる「図書石」まで様々。
◇寿山石…福建省産で主要な篆刻印材、彫刻素材にも利用されます。主成分は葉ろう石。
◇巴林石…内蒙古自治区産で主要な篆刻印材、鶏血石を含む多様な色彩があり、比較的新しく知られるようになった印材で産出量も豊富。
◇昌化石…浙江省産で主要な篆刻印材、鮮血のように鮮やかな赤を発色する鶏血石で知られる。
◇瑪瑙石…縞状の玉髄の一種で、各種の彫刻材料としても使われます。オパール(蛋白石)、石英、玉髄が、火成岩あるいは堆積岩の空洞中に層状に沈殿した鉱物の変種。
◇水晶石…二酸化ケイ素が結晶してできた鉱物で、六角柱状の美しい自形結晶となっていますが、中でも無色透明なものを水晶と呼ぶ。
清代初期の高兆『観石録』、毛奇齢『後観石録』を見ると、石の色合いと形容的表現によって印材の名称がつけられています。清代中期になると陳克恕が『篆刻鍼度』を著し、山地別に石印材を紹介しており、恐らくこの頃から石印材の需要が増し、中国各地で石印材の採石が行われたのだろうと言われています。民国初期には張俊助が『寿山石巧』を著し、石印材がどこの坑洞で採掘されたかを詳細に分類整理し、名称を付けています。
日本においては山内秀夫『石印材』、小林徳太郎『石印材』、『図説石印材』、明石春浦『田黄寿山石』などがカラー図版を用いて採石地別に分類整理して石印材の名称を紹介しています。
また、最近、中国で出版された陳石『寿山石図鑑』、童辰翊『中国印石図譜』も詳細に紹介されていて、日本の篆刻家も重宝しています。