堆朱-1

更新日:2020年12月01日
梔子堆朱盆(北京故宮博物院蔵)
 堆朱とは、漆に油を混ぜて、幾重にも塗って厚くし、そこに紋様を彫刻した彫漆の一種です。中国では宋代(960年〜1279年)以降に剔紅(じっこう)と呼ばれて盛行し、元代には嘉興府西塘楊匯(浙江省)出身の張成、楊茂が名匠として知られました。彼らは花鳥、草花、楼閣、山水、人物、そして渦や唐草など複雑な紋様が連続して表現するなど躍動感溢れる堆朱作品を次々と発表しました。漆を一度塗った厚さはわずか0.03ミリ程度しかないので、この作業を数百回も繰り返してようやく厚い層になりますから、気が遠くなるほどの時間がかかります。そのため古来より堆朱作品は何ものにも代え難い贅沢品でした。明代第三代皇帝成祖の永楽期(1403〜1424)になると、北京に宮廷専門の堆朱工房が設置され、皇帝が好んで下賜するほどまでになりました。清代には俗に〈はしか彫〉という繊細な技巧が生み出されました。
 日本には平安時代末から鎌倉時代初頃に伝来し、室町時代になり本格的に製造が始まったとされています。延文五年 (1360) 、日本で初めて堆朱を作ったと伝えられる長允は漆工芸の堆朱技法を伝えた堆朱楊成の始祖です。張成と楊茂の名を取って楊成と称し、その子孫は代々堆朱楊成を襲名しました。足利義詮の命で延文年間(1356〜61)から、彫り物を工夫して明治維新で廃業するまで、20代に亘って江戸幕府に仕えました。
 次号では貴重であればあるほど贋物が出てきます。その辺りをちょこっと話ししますねぇ。
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