さて、「潜泉印泥」の創設者、呉隱(葉舟)は、清朝末期の書画篆刻界で卓越した存在であった丁仁(輔之)、王提(福庵)、葉銘(葉舟)とともに印社結成について協議を重ね、1913年秋、初代社長に呉昌碩を推挙して西★印社を設立した四君子の一人です。
呉隱(1857〜1922)、浙江紹興の生ま
れ、字を石潜、号を潜泉といった。書
画、篆刻、碑刻を良くし、古印を蒐集
し「古今楹聯匯刻」を編纂した。妻の
孫織雲女史も篆刻に巧みであったこと
から、呉昌碩氏の指導を受け、呉潜泉
夫妻は優れた印泥を作り上げた。
その製法は息子夫婦に受けられ、李耘
萍女史はその三代目に当たる。
そして「張魯庵印泥」の創設者、張魯庵は印泥製作で「大師」の称号を得た当時、北京には皇帝御用達の徐正庵という印泥製作の名人がいたため、北京の徐正庵、西★印社の張魯庵を対峙させ、「南張北徐」という単語が出来たほどの印泥大師です。
張魯庵(1901年〜1962年)、浙江慈溪
の生まれ、寓居上海、字炎夫、号を幼
焦とした。末民国近代書道家、篆刻家
で、西★印社早期代表人物。蒐集家で、
400名家の印譜、歴代印章印璽1,000方
以上を蒐集、「海内第一家」と称され
た。
筆者が訪れた李耘萍女史の工房では、李女史自ら印泥の製作工程の図を示しながら説明し、実際に印泥を実演製作してくれました。一口に印泥と言っても、原材料の違い、環境、職人の熟練度や感性、同じように作っても出来上がりは雲泥の差だと聞きます。いい印泥だと一両(約30グラム)で1,000元(約16,000円)を超える印泥もありますが、作品が印影である篆刻家は印泥の質にこだわり、いい印泥を知っていますから、最近の印泥はどのような物がいいのか、教えてもらうのがいいと思います。