胡-2
更新日:2024年11月15日
(左)一級文物「跪座俑」 統一秦(前221〜前206年) 秦始皇帝陵博物院(「兵馬俑と古代中国〜秦漢文明の遺産〜」より)
(右)「和漢三才図会」より「胡床」
ここでいつもの余談ですが、日本では伝統的に行儀のよい座り方として「正座」の習慣があります。靴を脱いで家に上がり、家の中が清潔だからこそできる習慣ですが、正座は一般的には中国や韓国などでは罪人の座り方とされています。しかし本来、中国でも古来では、むしろを敷いて床に直接座る正式な座り方が正座でした。日本では臨戦態勢である武士の座り方として普及したものです。この認識の違い、おもしろいですね。そういえば中国の秦始皇帝陵墓の兵馬俑坑から出土した陶、俑にも正座像が見られますよね。
日本で腰掛けるという習慣が広まったのは一部仏教寺院を除き、以外にも明治時代になってからでした。寺島良安により江戸時代中期に編纂された日本の類書(百科事典)「和漢三才図会」では牀は「ゆか、とこ、チャン」と読み、床は止古と表記され、牀とは臥榻(がとう:寝台・寝床)であり、座って身体をくつろがせるもの、とあります。臥榻といえば「臥榻之側」という有名な故事成語があります。
「臥榻之側、豈容他人鼾睡乎(臥榻の側、豈に他人の鼾睡を容れんや)」
です。出典は「十八史略」で、鼾睡はいびきをかいて眠ることですので、
「自分の領域を、他人が荒らすことを許さない」
という意に使われます。