東京奥林匹克運動会（オリンピック）-1

　昨年、東京で開催された東京奥林匹克運動会（オリンピック）は、」いくつもの感動、感激、そして無念、筋書きのないドラマを夢中で観戦させてもらいました。小生は実は20年前に「奥林比克（オリンピック）」の原稿を書いています。この時は大阪に対して中国が国の威信を賭けて招致運動を行い、2008年招致を獲得することになったのですが、今号では東京五輪の話題を中国に絞ってお話ししたいと思います。
　中国は東京五輪でサーフィン、野球・ソフトボール、ハンドボールを除く30競技に、新型コロナウイルスのワクチン接種率99.61パーセントの選手431人を含む代表団777人という国外開催の五輪では過去最大規模の参加をしました。そして中国人「金メダリスト第一号」は射撃・女子エアライフルの楊倩選手（21）が五輪新記録の251.8点を記録し、自国で大きな話題になりました。彼女は浙江省寧波市の農村出身で、射撃の才能を見いだされ、国内トップ校である清華大学に進学した現役の大学生です。2000年代生まれの新世代「〇〇后」ですが、金メダルを獲得したことで一躍「清華女神」の愛称がつき、若い世代の憧れの的になりました。
　また、フェンシング・男子フルーレ個人で香港の張家朗選手が金メダルを獲得しました。この模様は香港の大型ショッピングモールでライブ中継され、大勢の市民が会場で観戦したのですが、表彰式で中国の国歌が流れた際、香港では抗議の声とともに「We　are　Hong　Kong（私たちは香港）」のかけ声が何度も上がり、国歌はかき消されました。英国植民地時代の香港の旗を掲げる市民もいたそうです。香港では、サッカーの試合などで中国国歌が流される際にブーイングが相次いだことから、去年6月に中国国歌への侮辱行為に罰則を科す「国歌条例」が施行されました。
　中国の指定席であった卓球では、男女ともにシングルス決勝では中国人選手同士の対戦となるなど面目躍如でしたが、最初の種目の混合ダブルスで日本の水谷隼選手と伊藤美誠選手のペアが金メダルを獲得し、2008年の北京大会から三大会連続で続いていた全種目金メダル獲得の記録が途切れるなど、競技結果に対してはショックを受けたと報道されていました。
　次号では、自転車競技で金メダルを獲得した選手が、胸に「毛沢東紀念章（バッジ）」を付けて表彰式に臨み、その行為が政治的な声明を出したと判断されたことについてお話しします。実は筆者がコレクションしている紀念章だけにそれなりにショックを受けました。