茶藝と朱砂壺-1

更新日:2015年08月01日
 中国の古の格言に「暮らしに必要な七つ」のものとして、「薪(柴)、米、油、塩、醤油、酢、茶」が記されています。そのなかでもお茶は中国唐代の陸羽が著した(760年前後)世界最古の書「茶経」において、紀元前2700年頃の神農の時代から飲まれてきたとされます。
 神話が本当ならば、中国茶はこれまで4700年以上に亘って飲まれてきた、中国人にとってなくてはならない生活必需品の一つと言えます。茶を以って健康な体を作り、茶を以って精神統一し、茶を以って客をもてなし、茶を以って友人と交流し、茶を以って先祖を敬うという、精神性の高いものでした。
 その後、時代を経て明太祖・朱元璋が洪武24年に「団茶廃止令」を出し茶文化に変化をもたらしますが、明代1597年(万暦30年)になると、「最高の茶書」とされる文人・許次★[(きょじじょ)?〜万暦32年]は「お茶を飲むのにふさわしい時」として、茶書「茶疏(ちゃそ)」において「飲時(いんじ)」という詩歌を著し、高い評価を得ました。
  心手間適  披咏疲倦
  聴歌拍曲  訪友初帰
  軽陰微雨
  身も心も穏やかな時、詩を詠むのに疲れた時、
  歌や曲を聞く時、友を訪ね、家宅した時、曇り
  や小雨が降る時
と、TPOに応じたお茶の飲む時について説いています。
 さて、以前、「中国茶と茶藝」についてお話しました。日本のようなお点前のなかった中国において、1970年頃から経済成長下の中国大陸で、日本の茶道を参考にした茶藝は流行り出しました。今号では茶藝と切り離すことの出来ない茶器にスポットを当てたいと思います。前述した陸羽は「茶経」において、
  器為茶之父 器は茶の父
  水為茶之母 水は茶の母
つまり、茶器と水は美味しいお茶をいれるための最低条件としています。
 次号ではそのお茶を楽しむための朱砂壺についてお話ししたいと思います。
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