大地之子(大地の子)-2

更新日:2014年10月16日

●胡耀邦総書記(左)と墓苑

 作者・山崎さんは、戦時中、学徒動員として軍需工場で砲弾磨きをし、戦争の不条理や悲惨さを実際に経験した最後の世代です。その経験から『大地の子』は限りなくノンフィクションに近い小説として描写され、日中間の「考え方の相違」を忠実に描くため、党や役所の厚い壁を乗り越えて綿密な取材を敢行しました。その背景には、当時、中国共産党の総書記であった胡耀邦氏(1915〜1989年)の全面的協力があったそうで、
  「中国を美しく書いてくれなくてもよい。中国の欠点も、暗い影も書いてくれて結構。ただし、それが真実であるならば」
そして、このあとに
  「それが真実の中日友好になる」
と励まされたそうで、農村でのホームステイ、東北地方、新疆ウイグル自治区、延安、西安、内蒙古、さらに未開放地区などの取材許可も下りたとのエピソードも知りました。
 閉鎖的だった当時の中国で胡耀邦氏は開明的な人物で、「愛国無罪」を批判、チベット弾圧を謝罪するとともに政治犯を釈放、さらに山崎さんへの取材協力は異例の措置であったため、「国家機密を外国人に暴露した」との項目が追加され、ついに失脚しました。
 そして1989年4月15日、天安門事件が起こる2カ月前、胡耀邦氏はこの世を去りました。第二次天安門事件は胡耀邦氏の追悼デモが発展したものとされ、今でも江西省★陽湖畔共青城にある胡耀邦総書記の墓苑には多くの人が参拝に訪れています。

★…「番」におおざと

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