紙馬-2

更新日:2023年07月15日
左上から雲南紙馬「水府龍王之神 水府娘娘之神」「火神之位」「白虎之神」「天喜之神」「甲馬請神」「聖母娘娘」「九霊竈君」「右門将軍 左門将軍「祖先之神」
 明代初期、雲南漢族は大量移住の最盛期を迎え、白族、彝(い)族は漢族文化の影響を受けながらも、民族独自の宗教観念と伝統的信条をそのままを継承し、白族の「本主」「大黒天神」「小黄龍」、彝族の「土主」などの民族神、地方鬼神を形成し、特色ある紙馬を生み出しました。民間伝承であるが故に、地方ごとに民族神・地方鬼神を形成し、特色ある紙馬が生み出されたのです。
 さて紙馬の役割ですが、願い事の対象である神に祈りを捧げるためのツールであるということです。使い方としては、紙で作った模造銭「紙銭」とともに火をつけて燃やします。それは煙とともに神々の世界や死者の世界に願いを伝えることが目的です。
 つまり紙馬は神々や死者との交流するための通信手段であり、中国の人々の信仰を支える大切な通信メディアとしての呪符だったのです。1960年代後半から1970年代前半まで続いた文化大革命の間、雲南の人々は版木を土中に埋めたり屋根裏に隠したり、あるいは近年になり記憶を元に新たに版木を作り、神像版画に刻した神々の世界を守り続け、今でも新しい紙馬版画を作っているそうです。
 1950年代初めの調査によると、江蘇省無錫には1,000種類近くの紙馬がありますが、最も盛んな雲南紙馬になると、有名な神像呪符「甲馬子」など3,600種類にも及びます。仏経、道経などの版画と区別するため「民間版画」とも呼ばれますが、「紙馬」とは別に「神馬」「甲馬」などとも呼ばれています。
 雲南紙馬は紙色に対するこだわりもあり、雲南紙馬はほとんど中国伝統的木版画印刷である水印木刻で、顔料を水で溶く技法を使っています。墨汁、青藍色染料「インジゴ」など染色剤、万年筆用の赤や青や黒インクを印刷材料としています。朴訥で何とも言えない優しいデザインの紙馬には人を引き付ける魅力があります。
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