不管三七二十一-1

更新日:2015年10月01日
無茶苦茶な理論を説く蘇秦
 日本語に「とにもかくにも」という言葉があります。元々は「とにかく」に強調する意味の助詞の「も」が加わったものです。「ともすれば」は、「そのようにすれば」という原義からすると「場合によっては」を意味し、「かくにも」は、「かくなるうえ」は、本来は「斯くなる上」と書き、「このようなことなら」という意味になります。古語では「と」と「かく」に「に」で並列させ使われた複合語です。「と」も「かく」も現在も使われる語句の複合語ですし、だからこそ現代でも「とにもかくにも」という言い方もあるわけです。
 漢字表記で「兎に角」は、「とかく」の当て字「兎角」を真似た当て字で、単に漢字を拝借したもののようです。平安時代から江戸時代までは「とにかくに」が用いられていましたが、夏目漱石が多用して広く用いられるようになったとも言われています。その「兎角」ですが、中国殷代・紂王の時代の神話伝説「述異記」に
   大亀生毛、而兎生角、是甲兵将興之兆
があり、
   大亀に毛が、兎に角が生えた。これは戦乱の兆しだ
とあります。
 「兎角亀毛」、直訳すると「ウサギに角が生え、亀に毛が生える」というとんでもない成語で、つまりは実際にはありえないことの喩えです。
 余談ですが、この伝説は南朝斉の祖沖之か、南朝梁の任ムの撰と言われていますが、実際には唐〜宋代(618〜1269)に、任ムと同時代の書籍から集められたものです。
 次号ではタイトルにある慣用句「不管三七二十一」について、詳しくお話しします。
←前へ 目次 次へ→