香木と香道-2

更新日:2015年09月15日
門戸厄神東光寺資料館蔵伽羅原木
 現在では、どのような理由で沈香が出来たのか未だに解明出来ないばかりか、この数十年で採取そのものも困難になりました。そうなると価格は高騰する一方で、質の悪い沈香を伽羅と称して販売したり、人工の偽物も流通するようになっており、専門家でも騙されるような事態になっています。
 日本で沈香に関する最古の記録は『日本書紀』で、推古天皇三年(五九五年)四月に、
  「推古三年夏四月沈水が淡路島に漂ひ着け
  り。甚大き一圍、島人沈香しらず、薪に交
  て寵に焼く、其煙気遠く薫る、即異なりと
  して献る」
とあります。
 その淡路島に漂着した香木を燃やしたところ、よい香りがしたので、その香木を朝廷に献上し重宝されたそうです。東大寺正倉院宝物には鎌倉時代よりも前に収められた巨大な香木「黄熟香(おうじゅくこう)」がありますが、権力者たち、とくに足利義政・織田信長・明治天皇は付箋によって切り取った跡が明示されているほどです。
 さて、最近の中国美術オークション市場における香木について、アラブの大富豪や中国の振興富裕層がキロ単位でまとめ買いしては、置香炉で焚いて消費するばかりか、投資対象にして大儲けしている輩もいるそうです。
 そういう乱暴な事態から、産出国にとっては樹脂比率が高いことさえ明示すれば「最高品質の香木を選りすぐって販売する」必要もなくなり、十把一絡げでまとめ売りして大金を手に入れた方がよくなっているようです。そのため老舗の香舗が廃業するほどだそうです。
 また手っ取り早く「日本国内にある古い香木を探した方がよい商売になる」と気付いた古物商やバイヤーたちが、「高くても日本国内に古くからある品質の良い沈香を仕入れた方がリスクも低い」と精力的に商売しており、日本の仏僧たちが嘆いています。
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