甲と冑と兜-1

更新日:2016年12月01日
殷墟出土青銅兜
 甲は十干の最初の字ですが、字形は亀の甲羅を形取ったもので、そこから甲羅のような堅い殻に覆われた種を意味しています。頭部を防御する武具「甲」、「冑(かぶと)」、「兜(かぶと)」とも書きます。甲について漢和辞典で調べたところ、字義の最後に国訓として
  @こう、「手の甲」など物の背面
  Aかん、声の調子の高いこと「甲高い」
  Bかぶと
とあります。
 つまり「かぶと」は日本語のみの読み方です。では本来の甲の意味は何でしょうか。亀の甲羅は亀の体を覆うもので、頭までは覆っていません。つまり甲は「よろい」を意味します。「かぶと」は「兜」か「冑」と書きます。ですから甲冑(かっちゅう)は「よろいとかぶと」のセットになります。ということは、「甲」の読み方は、日本語ではいつの間にか字義から離れ誤訳されてしまったと思われます。
 中国河南省安陽市侯家荘にある殷墟遺址は「小屯村出土の甲骨文」で知られていますが、鋳型で鋳造されたと見られる殷、商代後期の青銅製兜(『侯家荘、一〇〇四号大墓』)が大量出土しており、それらの特徴で、頭頂部に装飾として鳥の羽を挿すための管状の突起があります。これが現在、確認出来る中国における最古の「甲」ということになります。
 次号では、「甲」から少し脱線してしまいますが、無理やり「甲」にまつわるお話をさせていただきます。
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