甲と冑と兜- 2

更新日:2016年12月15日
かちらは「かぶと虫(甲虫、兜虫)」
 さて、関西人の筆者にとって、「甲」という漢字から連想するものといえば、「甲子園」か「六甲」、「甲南山手」といった地名がすぐに思い浮かぶところですが、甲子園だけは甲子の年に建設された干支にまつわる甲子園球場周辺の地名からの命名です。「甲南」は神戸市の北側にある六甲山の南側に位置することからの命名です。西宮の甲陽園・甲東園・甲陵などは西宮市西北部に位置する六甲山脈東端「甲山(かぶとやま)」の地名に因んだ命名です。
 六甲山の命名について調べたところ、元亨釈書の記述から、仲哀天皇の皇后である神功皇后(成務天皇40年〜神功皇后69年4月17日)が国家平安守護のため、山頂に如意宝珠と六つの兜を埋めたことで名付けられたという説があります。
 また、信仰の対象であった甲山の甲(コウ)の音が歴史的仮名遣で甲(カフ)と読んだコトから、これが変化して「コウ」となったという説もあります。
 ところで、カブトムシ、クワガタムシ、カミキリムシ、ホタル、テントウムシ、ゲンゴロウなどの昆虫は甲虫(こうちゅう)類に属しています。その姿がよろいをまとっているように見えるからです。カブトムシを漢字で「甲虫」と表記することがありますが、角が兜の前立てに似ていることから命名されていますから、本来なら「兜虫」と表記するべきだと思います。ここでも日本に来てから字義から離れ誤訳されてしまった例として挙げられます。
 余談ついでに「甲」は日本では「きのえ(木の兄)」と読みますが、これは陰陽五行説「木の兄(きのえ)」の読み方、つまり「甲の日、つまり木の兄の日」を省略して「甲の日」となり、それがそのまま通用するようになったという説が正しいようです。
 参考までに「十干」豆知識として甲(木の兄=きのえ)の続きは、乙(木の弟=きのと)、丙(火の兄=ひのえ)、丁(火の弟=ひのと)、戊(土の兄=つちのえ)、己(土の弟=つちのと)、庚(金の兄=かのえ)、辛(金の弟=かのと)、壬(水の兄=みずのえ)、癸(水の弟=みずのと)となります。
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