硯譜-1
更新日:2020年10月01日
書道家のなかには硯好きが高じて、実用硯、鑑賞硯など様々な硯の蒐集家がいらっしゃいます。石硯の他に漆硯、陶硯、鉄硯もありますが、漢〜六朝時代には磚や瓦当などに作硯して瓦硯、瓦當硯、☆硯として楽しみました。北宋を代表する硯の蒐集家といえば間違いなく米★[元章1051年(大観元年)〜1107年(皇祐3年)]でしょう。米★「硯史」の影響力は絶大で、後世に硯に関する論文章は「硯史」の影響を受けたと言えます。
清朝になると硯に特化した蒐集家が現れますが、金冬心などは百ニ硯田富翁と号するほどの愛硯家でした。それとともに硯から直接、拓本を採り、硯譜を作るような蒐集家も現れました。とくに著名な硯譜に「高鳳翰硯史」があります。
高鳳翰(1683〜1748?)、清朝中期の画家で山東省膠州の
人。字は西園、号は南村。晩年には、南阜、老阜。雍正5年
(1727)孝廉方正に挙げられ、官は安徽省歙県丞となり、
地方官も歴任しましたが、1737年(乾隆2)、廬見曾が讒言
を受けたときに列坐して獄に繋がれ、のちに官を辞しました。
晩年は揚州を中心に活躍したため「揚州八怪」の一人に挙げられました。書は草書、篆刻にも優れましたが、1741年(乾隆6)に持病のリュウマチが悪化により右手を患い、以後、左手で威勢のよい山水・花卉画などを描くようになり、尚左生と号し、左手書と号するようになりました。
次号では代表的な硯譜とご紹介と、高鳳翰が表した代表的硯譜である、漢碑の縮模を硯に刻し製本した労作「百漢硯譜」についてもお話ししたいと思います。
☆…土篇+専
★…草冠+市