食欲の秋がやってまいりました。パソコンに保存している中国の画像を見ていたらおいしそうな写真がたくさん出てきて、そのフォルダ「杭州」のなかに名物料理「葱包檜」という名前で保存している画像がありました。説明するのが難しいのですが、中国風揚げパン「油条」とネギを巻いて少し表面を焼いた中国風クレープと呼ばれる「春餅」です。これを北京ダックなどを食べるときに使う、黒酢の効いた「甜麺醤」につけて食べます。前にも書きましたが、中国料理はその名称を見れば大体、料理の内容が理解出来ますが、葱包檜児も「葱」はネギを「包」包み、「檜」は色んな具を混ぜて煮込んだものとなります。要するにごった煮という料理です。
実は、「檜」にはもう一つの意味があり、以前、「岳飛と秦檜」で紹介した秦檜を指します。南宋朝廷で対金和平派代表であった宰相・秦檜[元祐5年12月25日(1091年1月17日)〜紹興25年10月22日(1155年11月18日)]です。秦檜は金国を打ち破って軍功を収めた岳飛を完全な冤罪「莫須有(あるかもしれぬがないかもしれぬ)」で毒殺しました。後世になり正史『宋史』に基づいて英雄・岳飛は「岳王廟」を作って祀られ、秦檜は妻・王氏とともに上半身裸で後ろ手を縛られ、跪いた姿の像が造られました。この像を見た多くの中国人は蹴ったり、唾を吐きかけます。この「葱包檜」は元々は「油炸檜(油炸桧)」、つまり「油で揚げた秦檜」と言われました。練った小麦粉を秦檜の形にし、油で揚げて食べたのが起源です。
次号では、中国では憎い敵の肉を食らって恨みを晴らすという発想があります。始まりが春秋戦国時代にまでさかのぼるという、相当な執念とも思えるこの思想の具他体例をご紹介します。