その結果1位になったのは、長寿のシンボルとされる丹頂(タンチョウ)鶴で、調査対象500万人中64.92パーセントにも及ぶ約325万人が支持するという圧倒的多数の大人気でした。一時、国家林業局が丹頂を国鳥唯一の候補として国務院に提案したという噂も流れました。ちなみに2位には朱鷺(トキ)が選ばれました。
ところが、1位のタンチョウの学名は「Grus japonensis(グルス・ヤポネシア)」であり、これは「日本の鶴(ツル)」という意味です。さらに、2位のトキの学名は「Nipponia nippon(ニッポニア・ニッポン)」であり、こちらも「日本」が入っているのです。
このようにタンチョウとトキのどちらの学名にも「日本」が入っていることから中国国内で議論が巻き起こり、面子を大事にする中国としては日本の国名が付いた鳥を選ぶことが出来ず、結果的に中国の国鳥にこれらの鳥は採用されなかったのです。国鳥選びは振り出しに戻ってしまいます。そして、これらの二羽の候補を除き、再びアンケート調査が行われたのですが、今度1位になったのは平凡な雀(スズメ)だったため、またも反対意見が噴出し、結局、現在も国鳥は決まっていないのです。
日本でタンチョウとトキが選ばれなかった理由ですが、国鳥選定時にタンチョウは各県で見られないこと、トキは水田を荒らす害鳥と思う人が多く、駆除の対象になっていたからです。
トキの名誉のために脱線しますが、平成11年(1999)、中国から提供を受けたペアの繁殖が成功し、日本初の人工繁殖ヒナが誕生しました。その後、日本の天然トキは絶滅しましたが、平成20年(2008)、佐渡で初めて10羽のトキの放鳥が行われ、自然の空に飛び立ちました。