みなさんは「ガチャ」ってご存知だと思います。株式会社タカラトミーアーツが登録商標するカプセルトイの商標名で、景品が入ったカプセルを購入する形式ですが、取り出すまで中身が分からないという点が主な特徴です。ゲームセンターや行楽地、ショッピングモールなど様々な場所に設置されていて、筆者も孫にせがまれて小銭を使い果たすばかりか、最近は1回500円というのもあって洒落にならないなと思っています。今号ではそのガチャに関連する話題です。
日本人には馴染みが薄いのですが、中国には目には見えにくい階層が存在します。戸籍(出身地)、学歴、職業、所得がそれで、しかも差別につながっています。中国には都市戸籍と農村戸籍があり、もし親が農村出身で農村戸籍なら、都市の大学を受験するハードルは都市出身者よりも高く設定されますし、都市で不動産を購入するにも都市出身者よりも条件が多く、購入するのが困難な立場となります。また、一人っ子政策の弊害で、結婚適齢期の男性が大幅に余っているという社会問題もあります。そのような状況のことを「投胎(親ガチャ)」と呼ぶようになりました。
投胎とは、子どもの出来は親の職業や家庭環境によって決まると考えられ、子どもは親を選べない、どんな親に当たるかは運次第ということを、取り出すまで中身が分からないカプセルトイの「ガチャ」に重ね合わせて言葉なのです。投胎が自分の欲しいものが選べないように、子どもはどんな親の元に生まれてくるかを選べない。貧乏、口うるさいなど、親に対して不満をもつ子どもが、「投錯了胎(親ガチャに外れた)」と言います。
逆に裕福な家で生まれた子は「投了一个好胎」と言います。そこから派生して「老師★蛋(先生ガチャ)」、「上司★蛋(上司ガチャ)」のような言葉も生まれています。「投錯了胎」は、不満を持ちながらも自分の置かれた状況を受け容れ、その環境で生きていくしかないという、諦めの言葉ともいえるでしょう。
次号では中国の「投錯了胎」、つまり階層ロンダリングについてお話ししたいと思います。
★…手偏+丑