羊が表す美と養と羨-1
更新日:2016年07月01日
「美」という漢字を見て悪いイメージを持つ方は少ないと思います。美人、美女、美貌など、一般的には「美しい」という意味に捉え勝ちですが、古代中国では美味、美餐、美食家など「美味しい」という意味で用いました。
これは「美」という漢字が「羊」と「大」という二つの部位から構成ことに起因します。羊を大きく育てることは生活の安定が保証されることを意味しますし、同じ発想の「養」にいたっては食べ物を与えて世話するという意味の他に、育てる、飼う、成長させる、という意味も持ちました。
このように古代中国人にとって、生活と家畜とは切っても切れない関係がありました。羊以外に、乾燥してザラザラした肌は「鶏皮膚」と鶏を用い、寒い日に皮膚が収縮し毛穴が逆立つ鳥肌を「鶏皮★(1)★(2)」と、やはり」「鶏」を用いました。
女性の肌の美しさを表現した詩人といえば唐の白居易(楽天)で、「長恨歌」で楊貴妃の肌を「凝脂」と言っていますが、白くて柔らかい肌を形容するのに多くの詩人や文学者が用いています。美人を表現するのに食生活に欠かせないものを使って描写する方法は中国も日本も同じで、その違いは中国では家畜やその加工品を使い、日本は海の幸を使うといったところでしょうか。
次号では再び「羊」の話から肉料理よりもめっきりあっさりしたモノを好むようになった筆者の個人的な話をしたいと思います。
作字
★(1)…疾の失を「乞」
★(2)…疾の失を「荅」