蘭亭硯-2
更新日:2018年01月15日
蘭亭硯の硯石として最も多いのが緑端渓ですが、まれに名品と呼ばれる硯に「★河緑石硯(学名・輝緑岩)」があります。この石は甘粛省の黄河支流である★河河底から宋代(960〜1127)に採掘された緑石ですが、宋代以降に起こった河の氾濫で流れが変わりってしまい、採掘場所が不明となったため幻の硯とも言われています。
書画に携わる人であれば、いい硯が欲しくなり、それが高じると珍奇名品と呼ばれる硯を愛玩するようになります。このような趣味人を愛硯家と呼びますが、その歴史は古く、今から約1000年前の五代までさかのぼることが出来ます。
この時代の地方国家・南唐、現在の安微省南部の江南地区の天子李後主がその開、この地に硯の美術的文化が育ったと言われています。官職・硯務官と呼ばれる役人に南唐の官硯として「歙州硯」を作らせ、莫大な俸給を与えました。そのため、技法も巧妙となり、材質も最高級の歙州硯が製作されたのです。後に、澄心堂の紙、李廷珪の墨、そして歙州竜尾の硯をもって「天下の三絶」とまで呼ばれるまでになりました。
さらに清朝になると、古名硯を蒐集・愛玩する文化が栄え、高兆・高鳳翰・金農など有名な書道家でかつ愛硯家も現れました。わが国にも犬養木堂、小野錘山、坂東貫山を筆頭に、書道家では中林梧竹、日下部鳴鶴、比田井天来、吉田包竹などが競って古名硯を蒐集しました。
硯は机上で鑑賞するのも一興ですが、水中に浸すと石紋が表れて鑑賞効果が倍増します。その効果を意匠して製作された硯もありますが、いずれにしても名硯を鑑賞する楽しみは蒐集した本人だけの密かな喜びでもあります。
☆(作字)…山編+蒦
★(作字)…さんずい編+「兆」
敬天齋主人蔵 ★(山編+蒦)村石蘭亭硯拓