敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

字源その2(vol.1)

 引き続いて、漢字の字源についてお話したいと思います。元立命館大学教授の漢字学者、白川静先生の説によりますと、男と女を使った漢字の中には封建社会の影響を明らかに受けたであろうと思われるものが多いそうです。
 たとえば許慎が著した中国最古の字書《説文解字》によりますと、「男」は『田』と『力』からなり、「田で力仕事をする丈夫な者」と記されています。それに対して「女」は手を前に組み、ひざまずいた形を表した象形文字であるとされており、このことからも女性が男性より一段低い扱いを受けていたということが確認されています。



 儒教を始めた孔子ですら、「女子と子供は養い難し」と説いているなど、封建社会のもとでは女性の隷属がそのまま漢字に表されたようです。
  実際に「女」に関連する漢字を調べてみますと、『奴』はしもべを意味し、『奸』は不道徳、『妄』はでたらめ、『妨』はじゃまをするという意味になっています。
  また《説文解字》を見ますと、女が2人並んだ『女女』は「だん」と読み、「がやがやとかしましい」という意味になります。 女2人でこれなのですから、3人娘のわが家などはどれほどかしましいか、容易に想像していただけると思います 。
  さらに女3人並んだ『姦』の本来の意味はみだらになり、ここでもいい意味に使われることは少なく、『姦才』は悪知恵のこと、『姦人』は悪人のこと、『姦通』はご存じ「不倫」、もしくは少し古くなりますが、「不純異性交遊」のことになります。