敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

漢字表記(日本篇vol.1)

  最近、私たちの身の回りでは、情報の多様化にともなう外来語の輸入が非常に増加しています。それら外来語を一般人の理解が得られるような漢字に置き換えることについては、いろいろな苦労があるようです。日本の歴史にこのような例を求めてみますと、約2000年前にすでに中国との外交があったことを示す「上奉文」にまで遡ることになります。
 当時の朝廷高官たちは必死で漢字を勉強し、邪馬台国時代にはすでに漢字をマスターしたエリートもいたようです。平安時代になって日本に輸入された漢字は、日本語として加工されていくうちに、和風漢文(変体漢文)や音訓表記のズレが生じてきました。
 『古事記』の「阿多良思」(あたらし)や『御堂関白記』の「糸星久」(いとほしく)、江戸時代の「動堕々々」
(どたどた)などの読みがそうでした。 日本で独自につくった漢字は国字と呼ばれ、人名・地名などに多く見られます。たとえば、「峠」、「枠」、「畑」、「込」、「榊」、これらの漢字は音読みのない国字です。国字のなかでも「搾」、「働」のように音読みを持つものもあります。そのほかには2つの漢字がひとつになった合字に「麿」、「杢」、「粂」などがあります。
 日本における外来語の漢字表記の方法については
@漢字の音や訓から表記する方法
A漢字の意味から表記する方法
Bその両者を混合型したもの
の3種類があります。
  たとえば漢字の音や訓を用いたものに、「珈琲」(コーヒー)、「曹達」(ソーダ)などがあります。漢字の意味から用いたものには、「麦酒」(ビール)、「煙草」(タバコ)などがあります。両者の混合型には、ともに楽しむ「倶楽部」(クラブ)や、混ぜて凝り固めた「混凝土」(コンクリート)、冗談話の「冗句」 (ジョーク)などがあります。
  これらのほかには「型録」(カタログ)、「画廊」(がろう)、「浪漫」(ロマン)などのように、日本から中国に輸出され、定着してしまったものもあります。
 このように漢字表記された外来語が、市民権を得て定着してしまえばふつうの日本語として認識され、使われてしまうのが時代性なのだと思います。