敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【假的2(ジャーダ・ニセモノ)】VOL.1


●潘家園旧貨市場正面入口(早朝5時撮影)

 前号に引き続き中国のニセモノ、今月号では書道関係にまつわるお話をしたいと思います。書道家・篆刻家の先生方は毎年お弟子さんを引き連れて訪中をされますが、最も楽しみにしているのが骨董巡りという方が多いようです。筆者も何かいい古美術品はないかと、北京の潘家園、古玩城は勿論のこと、天津の沈陽道、上海南京路、福祐路、その他著名な古物市場などの骨董街には必ずと言っていいほど立ち寄ってきました。今回フリーマーケットについてお話したいと思います。
 そのなかでも北京には有名な骨董フリーマーケットの一つ「潘家園旧貨市場」があります。北京中心部から南東にある潘家園は、毎週土日の早朝から地方の骨董商や個人が思い思いの品を持ち寄り、準備が出来た店から随時営業を開始するというスタイルでもう12〜3年の営業を行なっている一大フリマです。門をくぐると、古玩大庁、文化長廊といった店舗に加え、無数の個人店舗である露店が所狭しと建ち並んでいます。本格的な準備を怠らない店もあれば、ゴザの上に商品を並べるだけといった店もあります。ところが、立派な店構えだからといって必ずしもいいモノがあるとは限らず、その辺りは客側の鑑識眼が問われるところと言えるでしょう。筆者はもう十年近く前から掘り出し物を探しにこの潘家園やお隣にある古玩城をウロウロと物色していたのですが、他人より少しでも早くお宝を手に入れようと、早朝五時過ぎから開店準備に多忙な店の人に、「○○はあるか」とか、「○○はいくらぐらいか」とか、事前にポイントを絞り込むなど、それはそれは必死の骨董巡りをしたものでした。
 ところがよくあることなのですが、ある旅行雑誌に潘家園が紹介された途端、外国人観光客が次第に訪れるようになり、それとともに骨董品の質がどんどん落ち、粗悪な贋物や工芸品が主流を占めるようになってしまったのは有名な話です。またこの数年、いわゆる「いいモノ」がなくなってきた理由として一つに「オークション」の隆盛が挙げられます。バブルの影響で競売の方が高く売れるため、フリマに出店する意味が無くなったコトもあり、最近ではこの手のフリーマーケットで書画や古美術品などの本物に巡り合うことはまずないと言ってもいいような状況になっています。それにもかかわらず、相変わらず多くの書道家や篆刻家は贋物を掴まされているようです。日本では慎重でなかなかいいモノがあっても手を出さないのに、なぜか中国ではいとも簡単に騙されてしまうのは、日本人特有の「旅の恥はかきすて」的心理があるからだそうです。