【鬼】VOL.2
●地獄絵図、「ゾ〜ッ」とする世界です。
日本における鬼の原型をつくり出したのは平安京の都人、つまり陰陽師や密教僧など、当時の知識人たちだと言われています。とくに陰陽道と融合してからは、人の形をしているものの、牛の角と虎の牙を持ち、腰に虎の皮をまとい、恐ろしい形相で怪力の鬼という現在の形に変化したのです。仏教思想の影響を受け、鬼は「欲望をあらわにして傷ついたもの」、さらには「煩悩の化身」とされるようになりました。結婚式で白無垢を着た花嫁が「角隠し」を被る風習は、こうした考え方からきたものです。
人々の心に住み着いた鬼は実に多彩で、想像上の鬼の属性をうまく使い分け、強いもの、怖いもの、疫病のシンボル、時には山の神として、また子どもたちの遊びの素材として、暮らしの戒めや生活のアクセントとして引用されてきました。例えば最近は滅多に見ることのなくなった「鬼ごっこ」は神威のあらわれとして鬼追いや鬼むけ祭といった神事からきているものだそうです。
さてことわざに「疑心暗鬼」とありますが、この鬼の正体とは一体なんでしょうか。宋代・洪邁(こうまい)の「夷堅志」乙志に、遺体を安置した部屋から聞こえる物音に夜通し眠れず、翌朝恐々部屋を空けたら犬が逃げ出してきたという故事があります。つまり「疑心、暗鬼を生じる」という訳です。日本では「幽霊の正体みたり枯れ尾花」といったところでしょうか。
最近周りを見渡しますと、「土俵の鬼」は外国人に取って替わられ、「政治の鬼」は賄賂・収賄ばかり、お役所を見ても「仕事の鬼」どころか、経費の割増請求、架空残業計上など、まったく困ったものです。日本の将来のためにも「鬼の金棒を持ち、鬼の牙にも当たる決心で、そして鬼の首を取るような功績をあげ、鬼一口で鬼に笑われないような鬼ぶり」を発揮する人材を待ちたいものです。
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