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【人民元】VOL.1
●ご存知「人民元」
諸外国において米ドルやユーロ、日本円などを交換する際の為替レートは、通常毎日変化する変動相場という制度を採用していることは国際社会においては衆知のことだと思います。しかし中国政府は外貨交換を厳しく管理しているため、たとえば米ドルを中国の通貨である人民元に換銭(両替)する際の為替レートは、国家が管理する外国為替市場では米ドルに対して1ドル=8.277元前後でほぼ固定されてきました。実際は極めて小さな幅で微動していましたが、事実上の固定相場制を採用してきました。
しかしながら中国は今や輸出超過国で、とくに改革開放以後の外資進出が激しく、その結果中国国内でドルが余るという現象が生じました。
中国政府は日米欧のように金融機関が値動きを見て売り買いするような業務を行なわないこともあり、またレートの変動幅を前日の平均値から上下0.3%以内と決められていることから、中国人民銀行がドル買いをすることで、実質的な固定相場を維持してきたのです。急成長を続ける現在の中国の経済実力から考えると低すぎるといわれています。
そしてその影響をまともに受けているのがアメリカと我が国なのです。2002年アメリカの対中貿易赤字(赤字比率21パーセントは世界最大)は1,000億ドルを越え、さらに2003年の対中外貨準備も3,000億ドルを越えたと発表しています。アメリカの貿易赤字の大きな要因は中国人民元の為替比率の低さにあると言われています。
我が国においてもスーパーや量販店は勿論ですが、私たちの身の回りにある生活雑貨や繊維関係の多くに「MADE IN
CHINA」の表記を見つけることができます。それら膨大な数の中国製品は、対中貿易赤字とともに、拠点を人件費の安い中国に移した日本の多くの製造業に従事していた社員の失業率を高めた原因と言われています。
これらの状況にアメリカや日本は相当な危機感を抱き、日本に次ぐ国際収支の黒字国となり、さらに世界貿易機関(WTO)にも加盟した中国に対し、国際的バランスを配慮することを求めることは当然と言えるでしょう。
また実際に中国人民元の不当評価安は世界貿易において主要工業国の産業調整やデフレ、貿易不均衡など多くの悪影響や問題を与えており、それらの状況がアメリカ、EU、日本などから人民元切り上げ圧力につながったと言われています。
次号では実際に人民元が大幅に切り上げられた場合どうなってしまうのかについてお話したいと思います。
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