敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【老饕(食いしん坊)】VOL.2

 
●犬を使った鍋料理

 20世紀になり、中国をよく訪れる人でも、よほどの下手物喰いか世間体を気にしない人が口にする以外、表だって犬料理を食べる機会は減りましたが、犬肉は体を温めたり、冷え性、また心臓にも効能があるなど、古来より理に適った食材だったのです。これから始まる秋から冬にかけての時期は、犬の美味しい季節だと言われています。
 食材としての犬肉には、旅行の期間中ペットとして飼っている犬を預ってもらった友人に、帰国後「犬は?」と聞いたところ、「あ〜おいしかったよ」との返事があったという古典的笑話もあるくらいです。
  そもそも日本人もその昔には犬肉を食していました。縄文時代の遺跡からは多くのイノシシや鹿の骨とともに犬骨も出土していますし、13世紀と推定されるゴミ箱からは複数の異なった犬の骨が発見されていることから、まとまった数の犬を調理したとの可能性も指摘されています。
 恐らく日本人が犬肉を食べなくなったのは、徳川五代将軍綱吉による「生類憐みの令」が発端か、あるいは仏教が教える「殺生禁断」が浸透していたせいかと思われますが、自国が食べないからと言って、他国の伝統的食文化を否定する権利はないはずです。
  このことは科学的調査に基づいて生態系に悪影響を及ぼさないことを確認しているにも関わらず、「かわいそう」という理由だけで国際捕鯨委員会(IWC)に捕鯨禁止、すなわち日本の伝統的食文化を否定されてしまった鯨食についても同様と言えるでしょう。
 このような伝統的食文化が未来まで残ることを祈りたいものです。