敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【中国武術】VOL.1

 
●練習しましたヌンチャク。永遠のヒーロー・李小龍。

 古代中国の交通手段を表す有名な「南船北馬」という言葉は、北は陸続きのために馬を使い、南は川が多いことから船による移動をしてきたことを示しています。中国伝統武術(古くは国術といいました)も同様で、大陸中央を流れる長江を境に北派拳術と南派拳術という分け方をしています。
 北派は飛んだり跳ねたり足を使う技が多く、南は至近距離での打撃系の技が多いことから「南拳北腿」という言葉も生まれました。
 太極拳・功夫(カンフー)・長拳(少林寺)・南拳など中国の伝統的武術で使われる武器は中国では器械と呼ばれています。戦車もミサイルも、拳銃も大砲も、いわゆる武器といえば器械と表現するようです。その昔は兵器、または兵とも呼ばれていたようですが、いずれにしても武術で使われる器械は手の延長とも言われ、武術を修行する者は必ず器械武術も学ばなければならないとされてきました。
 中国武術に使用される四大器械は、剣、刀、槍、棍が代表的ですが、その時代や地域によって、また流派の違いによって何百種類もの器械があり、なかには「こんなので闘えるの?」というような面白い器械や不思議な器械もあり少しでも触れたいのですが、紙面の関係上別に機会があれば紹介したいと思います。
 さて太極拳は元はといえば河南省陳家溝で生まれ、そして少林寺にも大きな影響を与えた伝統武術ですが、現在では健康面における部分が強調されたことから、朝の公園でお年寄りが行う体操とお思いの方が多いかと思います。
 筆者の世代の人でしたら「功夫(カンフー)」のヒーローと言えば李小龍(ブルースリー)でした。映画を観たほとんどの男の子はブルースリーにでもなった気分に浸ったものです。カンフーで見かける代表的な器械と言えば「双節棍(ヌンチャク)」で、子供の頃宿題を忘れて必死に練習したり、友達同士で上達を競ったものです。
 次の「少林寺」は武術の始まりとされる中国河南省嵩山で生まれた武術です。そのなかでも成龍(ジャッキーチェン)が演じたことで一躍有名になった武術に「酔拳」があります。別名「酔八仙拳」とも呼ばれる象形拳の一つです。
 映画で観たように「酔っているように見せかけた歩法」で、フラフラしたかと思えば突然立ち止まり、そしてバタッと倒れるといった演技で観客の大爆笑を誘っていました。
 余談ですが「酔拳」は少林寺でも行われていましたが、修行寺で「酔っぱらいの武術」を訓練するというのも面白い話です。酔拳の器械には「剣」と「棍」などがあります、現在では中国の大会で多くの選手が「伝統器械」部門で「酔剣」の演武を行なっています。