【中国老街-3「四合院」】VOL.1
●狭〜い胡同と四合院正面入口
北京における民家のなかで最も一般的な建築と言われているのは四合院と言われる住宅です。四合院とは中国特有の密閉型建築で、敷地中央に配置された空間(中庭)を囲むように、四棟の家屋を東西南北に対称的に配置された建物のことを言います。対称形に配置された平面と、閉鎖型に造られた外観が四合院の特徴となっているわけです。地方には二階建てやそれ以上の四合院もありますが、北京では殆どが平屋の四合院となっています。四合院建築は漢代に確立したと言われているのですが、その後は明〜清時代までその伝統建築が伝えられました。今日、北京に残る多くの四合院は清代に建てられたものです。
以前ご紹介した胡同とは、この大小様々な四合院が軒を接して並び、その間を通っている道の総称です。住居はそこに住む人々の社会的地位や階級の違いによって建物の規模や豪華さが大きく異なるのは世の常です。四合院も例外ではなく、高級官僚や裕福な家庭の大四合院は建物が豪華で装飾も美しく、しかも前後には横庭もあります。しかし中国建国後に開放されてからは長屋式に区切った庶民の小四合院が建てられ、それらは構造も単純で、門も狭く壁も低い四合院となっています。
また贅沢な四合院は、採光を考えて南向きに造られているため、当然のことながら大半の胡同は東西方向に走ることになります。さらに交通の便を考え、大きな胡同の間には南北を結ぶ小さな胡同もあります。世界文化遺産・紫禁城を地図で見れば分かりますが、あたかも巨大な四合院のような構造で、建物間の路地が東西南北に対照をなし、そしてそれぞれが整然と配置され、その全体を高い壁で長方形に囲んでいます。その基本形は主屋である「正房」、その正面に「倒座」を、左右に「廂房」を対称に配置することで、中庭「院子」を囲む形式になっています。
次号では近代化の進む中国で、四合院すらデジタル化の波が押し寄せる状況についてお話します。
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