敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【印刷】VOL.1


●当時の木版印刷による写経(冒頭部分)

 現代中国の印刷業界は政府の開放政策の影響で年々成長を続けているため、日本の印刷会社を脅威と思わせるような論調は減るばかりか、むしろ協力関係を築くようなケースが増えてきています。とくにこの10年あまりの間に、従来の活版印刷からレーザーによる写植組版システムに移行したことで、新聞の99パーセント、出版の95パーセントがコンピュータを用いたDTP(デスクトップ・パブリッシング:Desktop Publishing)編集・管理システムに移行しています。
 活版印刷とは活字を使って行う印刷のことをいいます。印刷は大きく四つの種類に分けられるのですが、版の種類によって凸版、平版、凹版、孔版があり、活版印刷はこのなかの凸版印刷になります。凸版印刷には鉛版や樹脂版、写真凸版などがあり、これらの総称として活版印刷ということになります。
 印刷といっても原則は小学生の頃に習った木版刷りやハンコと同じで、活版印刷の基本的仕組みはとても簡単です。印刷される部分が一段高く、それ以外の部分が低くなっていて、高い部分にインクを付け、紙を乗せて上から圧力をかけることで紙にインクを転写(印刷)する訳です。木版刷りは版そのものが一枚の板であるのに対し、活版印刷は文字の一つ一つが別々の活字で出来ていて、文字を組み換えたり、印刷終了後に元の保管場所に戻し、また新たに別の版を組むことが出来ます。活版を英語でmovable type(可動活字)呼ばれるのはこの理由からです。
 中国における最も古い組版(活字を並べること)印刷に関する記述は、北宋時代の11世紀、沈括が記した「夢渓筆談」に登場する工人・畢昇が最初で、彼は1041〜1048年頃に、膠泥(こうでい)活字を用いて印刷したそうです。また元代1313年、王禎の「農書」に、木活字三万余字を作り、これらを彼の設計による回転活字台に韻によって並べたことと、それを用いて印刷したことが記されています。これらの記録から、活版印刷術は中国で最初に発明されたものとみて間違いないようです。
 次号は、我が国では絶滅寸前となりつつある活版印刷が果たした功績について少し触れたいと思います。