敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【印刷】VOL.2


●グーテンベルグ(左)と彼が発明した手動写植印刷機

 しかし今日の活字の原型となるものは15世紀、ドイツ出身の金属加工職人、ヨハネス・グーテンベルグの発明による活版印刷機が最古です。それまで手書きで制作されていた書籍や書類が、この発明のおかげで一度に大量複製できるようになり、一般の人々にまで印刷物を通して活字が広まりました。以後、活版印刷は印刷の中心となり、産業革命による機械化やその後の技術革新で、さらに短時間で大量のものが印刷できるようになりました。
 日本でも幕末から明治の初めにかけ、本木昌造による近代活版印刷術導入の成功で、近年まで書籍、新聞、雑誌など、長らく文字印刷といえば活版印刷が主役でした。1970年代あたりから写植(写真植字)を使ったオフセット印刷が台頭し、設備が大変で取り扱いの面倒な活版印刷は、特殊な文字印刷の世界を除けば絶滅寸前となりました。
 写植機(写真植字機)は石井茂吉と森澤信夫の二人の日本人によって開発・改良、そして実用化が進められました。後に両者は写研とモリサワという、業界をリードする二大企業を設立しましたが、現在ではDTPの発達により、キーボードをたたくだけで文字製版までが可能になり、さらにパソコンソフト普及によりアマチュアでも名刺や案内状、チラシの組版までできるようになりました。
 これから活版印刷は仏教書や限定本の詩集・句集など、活字で印刷が必要な、趣味性の強い希少本の世界でのみ残っていくのかもしれません。