敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【失業と下崗(一時帰休)】VOL.1


●反日デモ行進する学生たち

 資本主義化する現代中国において、国有企業も現代的企業制度を導入しつつある昨今ですが、余剰労働者を吸収するほどまでには成長しきれず、その結果一時帰休させられた労働者が大量に増えています。ただし、一時と言っても元の職場へ復帰することはまずありません。つまり、資本投入による経済発展は果たしましたが、その結果として新規労働力を吸収したわけではなく、逆に国有企業の既存労働力を押し出す形になったわけです。 1994年ごろから盛んに彼らを「下崗」と言うようになりました。下崗労働者は、基本生活費、各種社会保障基金の納付などは元の勤め先である国有企業から保障されていますから、国の負担は大変なものとなります。中国の総人口に対する就業適齢人口の就業率は、発展途上国と先進国の平均水準よりも大きく上回っていますが、女性の就業率でもその率は群を抜いています。
 中国労働・社会保障部によると、中国は中・西部地区の事務手続きが遅れているものの、一年以内に失業者に対する基本的生活保障の失業保険への移行と一本化に向けた作業が完了するとともに、2〜3年以内に計画経済時代に発生した国有企業の余剰人員問題を解消すると発表しました。
 失業保険問題についてはすでに7つの省では完了していますが、これらの作業が完了すると、これまでの「下崗(一時帰休:自宅待機)」という概念は過去のものとなり、企業の人員削減は関連法律・法規に基づいて行われ、失業した人たちの生活は失業保険で保障されるか、あるいは最低生活保障規定が適用されることになるようです。
 労働・社会保障部・鄭斯林部長は「経済発展が進む東部で切り替えが完成するのをめどに、再就業促進のための構造作りとともに職業訓練の機会も増やしていきたい」と発表していますが、これは国が背負うコストやリスクの軽減を図るため、出来る限り移行作業の時間を短縮したいと考えていることが伺えます。専門家は、労働者の権利や保障にいてもようやく民主化が図られてきたことと同時に、行政主導型の高就業モデルから市場調整型の就業モデルに転換したと分析しています。