敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【法定通訳人】VOL.1


●中国最高人民法院

 この原稿をお読みいただく頃は夏休みも中半戦に突入していることと思われます。今夏は北京五輪の影響で、多くの書道団体が訪中を取りやめたとか、時期をずらしてから訪中されるとお聞きしています。
 みなさんが中国に行かれるとき、頼りになるのはやはり添乗員だと思います。通訳がいることは見知らぬ土地で安全に楽しく旅行をするためには大変重要なポイントです。ただし、通訳する側も買い物や日常会話程度のレベルでしたらそれほど緊張することはないと思いますが、重要な会議や商談であれば、やはり高い語学レベルの通訳が必要になります。
 高いレベルの通訳を求められる職業といえば法曹界ですが、最近は人手不足から深刻な状況になっています。裁判において外国語を通訳する人を「法定通訳人」と言いますが、現状では日本人女性か女子留学生が多いそうです。
 現在、日本には約60万人の中国人が住んでいますが、人口増加に伴い、中国人による犯罪も増加しています。2006年に日本において外国語を要した裁判(第一審)のデータのなかで、中国語による通訳を要した裁判は、なんと43.6パーセントにも及んだそうです。国際化社会の成熟に伴い、増加する外国人被疑者・被告人に対して、裁判所における人権保護を念頭に置いた中立的立場の通訳が必要と言われています。
 さて、中国の裁判における現状はどうでしょうか。日本の最高裁は中国では「中国最高人民法院」、地方裁判所は「中国高級法院」、以下、中級人民法院、基層人民法院があります。ちなみに弁護士のことを「律師」と呼ばれています。
 中国当局が発行する官報によると、過去9年間に裁判所が受理した刑事事件は500万件以上、被告は620万人余りに及び、無罪判決を受けた人はわずか1パーセント未満だそうです。この驚異的な有罪判決率を背景に、国際人権組織と中国の人権弁護士は、「中国の司法制度の不公平さ」を指摘するとともに、刑事事件の弁護は絶望的な理由として、「裁判において裁判の最終決定権は裁判官ではなく中国共産党(中共)幹部が握っている」と凶弾しています。