敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【法定通訳人】VOL.2


●日本の法廷。

 話を戻しましょう。法定通訳人は、犯罪者や被告人に関わる仕事ですから、ある程度の危険が伴います。また通訳としての中立性の問題、守秘義務、そして被告席に座らされた中国人の、一生にかかわる重大な通訳をするプレッシャーは大変なものだと容易に想像出来ます。実際、過去に一審の有罪判決を受けたタイ人の傷害事件で、誤訳が原因で高裁に上告され、逆転無罪となった判例がありました。
 そのうえ日本の法律や裁判の知識も習得しなければならず、さらに通訳料金は国費で支払われることから民間基準よりも安く、裁判所も法定通訳人を確保するのは大変のようです。とくに希少言語の場合、法廷通訳人不足は顕著で、公訴提起の前後を通して同一通訳人ということも少なくないそうです。
 裁判官が発する日本語をどのように通訳するか、ここで日中両国の違いが浮き彫りになります。そもそも、中国語には基本的に男女の違いはありませんし、日本語の敬語、尊敬語、謙譲語も極端に少ないです。コミュニケーション的に考えても、日本人は相手の立場や人間関係に応じて敬語などを駆使するのに対し、中国人は意思を明確に伝えることを心掛け、不必要な敬語などは使いません。
 裁判官が「被告人は前へ」と言うと、日本人は英語のPLEASEにあたる「請」を頭につけて「前へどうぞ」と訳すのに対し、中国人はストレートに「前へ来い」と訳します。おそらく中国では犯罪者や被告人になるような人間に対して「敬語を使う必要などない」という考え方があるようです。
 来年5月21日から始まる我が国の「裁判員制度」、こちらも頭の痛い話題ですねぇ。