敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【宦官】VOL.1


●宦官を意味する甲骨文字

 中国では身体改造を行う伝統的儀式として、以前ご紹介した纏足や刺青などがあります。同様の儀式としてマヤ文明の頭骨変形もよく知られています。また宗教上の理由で行う割礼(かつれい)、オーストラリアの一部にある尿道下部を切開する「尿道割礼」、アフリカ地方のホッテントット族の間で行われる片方の睾丸を摘出する「半去勢」、さらにアフリカを中心に行われている風習として女性器切除や女子割礼などもあります。
 さて、中国の官僚登用試験であった「科挙」に合格する難しさは想像を絶するものがあり、科挙合格のために一生を棒に振った人もいるほどでした。それでも官僚になりたい、出世をしたい、そんな特定職業集団に加入するという野望を持った人に残された唯一の道は、宦官(かんがん)という儀式でした。
 宦官とは去勢が施された官吏のことです。「宦」は「宀」と「臣」からなる会意文字で、その原義は「神に仕える奴隷」ですが、時代が下るに連れて「王の宮廟に仕える者」の意味になり、宮中では去勢された者や自宮(じきゅう)した者を用いたため、彼らを「宦官」と呼ぶようになりました。自宮とは自己去勢を意味し、自らの意思で去勢手術を受けることをいいます。
 中国史に記録された最初の宦官は、紀元前1300年ごろの古代中国・商(殷)王朝の武丁時代の遺跡から出土した甲骨の解読により、すでに宦官が存在していたことが判明しています。その甲骨文字には男根切除を意味する象形文字が発見されたことから、それまで紀元前16世紀頃という説から紀元前14世紀頃にはすでに宦官が存在していたことが明らかになりました。
 その後1912年の清朝滅亡まで約3300年間、宦官はずっと中国歴代王朝に存在しつづけたわけです。次号、ショッキングな画像の紹介になります。