【民工】VOL.1
●寒空のもと、ささやかな昼食を採る民工たち(左)と、想像を絶する民工の帰省ラッシュ。
民工とは、民でありながら雇用主に雇われて働く肉体労働者の呼称です。90年代前後、中国では都市部の過密化を防ぐため外来戸籍者の流入を厳しく制限したため、出稼ぎ労働者の"不法定住"が始まったためだそうですが、それでも大都市を中心に全土で約1億5,000万人ほどいるそうです。
彼らは内陸部の貧困地帯といわれる農村部から沿岸部や都市部を中心に流入してきた出稼ぎ労働者が多く、被雇用者のなかでも最低の労働条件、最低の労働環境、最低の収入、そして何ら社会保障もない、労働者としての権利が全くと言っていいほど保証されていない状況にあります。一生懸命働いても給料遅配や未払い、ピンはねといった理不尽な差別も受けているそうです。
さらに転職を防ぐために身分証を預かったり、1カ月から2カ月分の給与を担保にされたりする例も報告されています。ただし、経済発展が全国各地で進んだ最近になってからは、農村部からの労働者が出稼ぎに行く地域の選択肢が増え、目的地が分散するようになっていたようです。
ある民間の行った調査結果では、民工が就く仕事といえば、まず3Kの代表である建築作業員、次に臨時工員が多く、いずれも30パーセント近くを占めています。10代から20代の若い女性たちは「打工妹」と呼ばれ、裕福な家庭の手伝いやレストラン従業員、按摩小姐(マッサージ嬢)、清掃員などが多いようです。
彼(彼女)らは現代中国の経済発展に欠かせない存在ですが、都市移住が認められない「農村戸籍」のままのため、都市住民とは差別されています。たとえば医療保険、失業保険などの福祉面、保健面などの社会保障を受けることも出来ません。実際に上海戸籍と農村戸籍(民工)の間には名目賃金において四〜五割の格差が存在しています。
多くの民工は一日十数時間働き、さらに残業・休日出勤しても1,000元(約13,500円)程度の月給にしかなりません。故郷へ仕送りをし、数人で住むアパートの家賃や生活費を差し引かれれば、手元に残るのはほんのわずかだそうです。
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