敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【民工】VOL.2

 
●肉体労働現場の民工(左)と、民工の帰省ラッシュの実際。

 さて、中国を改革開放へと導いたケ小平の「先富論」は現実となりました。「富める者から先に富め」というスローガンにより、都市部と農村部の二元構造は、狭間の格差をさらに広げ、農民を「二等公民」と呼ぶなど、根深い差別意識という格差を生み出しました。
 実際、ある報告によると、都市住民の可処分所得と農民一人当たり年間純収入との差は実質六倍以上といわれています。また、平均就学年数は農村部7.7年(中学二年程度)、都市部は12.2年(高卒業程度)と教育面についても大きな格差があります。
 日本でも、女工哀史や戦後の集団就職の歴史がありましたが、社会的弱者が国力としての経済発展する様を陰で支えてきた時代がありました。現在の日本でも、建築現場など、いわゆる3K職場には正当な権利や保障が十分に保障されていない外国人労働者が多いといわれています。
 昨年、筆者は上海を訪れ、外灘界隈の老朽化したビルの工事現場を見てきました。竹をビニールテープで結んだだけの足場で働く様は日本では考えられない危険そのものの現場でした。また、上海老街にある観光名所「豫園」へ続く寿寧路には、建築作業員では夢が叶わないことを悟った民工たちが、手持ちの預金を元手に路上店舗「民工屋台」を開いていました。春節前のかき入れ時と、必死に働く民工たちの姿を目の当たりにし、中国が先進国の仲間入りするためには、富を追求するだけでなく、制度的格差問題の解決と、従業員と"共生"する経営姿勢が必要なのではないかと感じました。