【漢方薬と西洋医】VOL.1
●現存する中国最古の医学書「黄帝内経」
漢方(和漢方・和方)は、江戸時代に蘭方に対して日本で発達した中国医学系の伝統医学の呼称で、明治維新以降の伝統医学復興期に、漢方医学という名称がつけられました。
漢方には鍼灸も含まれますが、日本では鍼灸は鍼灸師がおこない、医師がおこなうのは漢方薬による治療のみをさします。近代になり、日本では中国医学と西洋医学を取り入れていますが、中国医学といえば代替医学とされていることから、専門的な中医はいません。
他方、アメリカを始め、西洋医学先進国は、より安全でより速効性のある医薬品を求め続けた結果、新薬開発を目指して臨床実験などに費やした巨額の投資回収に四苦八苦しています。そのため、西洋医療に代替医療を併用した統合医療が注目されるようになっています。例を挙げると鍼灸や漢方薬で、脈々と伝承されてきた中国伝統医学による神秘的な治療や自然生薬の持つ薬効に注目され始めています。
ただし、中国で高い評価を受けた漢方薬でも、厳格な薬事法のある日本では取り入れられない薬も多々あります。現在、150種類近い漢方薬が健康保険適用として認可されていて、全国の病院や無数とも言える薬局・薬店で漢方製剤は手に入ります。さらに、美容関係、ダイエット効果を謳うネット通販や個人輸入代理などが急増する昨今、日本の漢方薬市場は二兆円にも上る規模に上昇しているそうです。
しかしながら、漢方薬の原料である生薬の八割は中国からの輸入に頼っているのが現状で、食の安全が崩壊した中国産に対する不安も指摘されています。また、中国では昔から一人ひとりの症状や体質に合わせて処方した生薬を煎じて服用してきました。しかし、現代では中医学理論に基づき、万人に共通する処方を選別して大量生産する製剤「中成薬」が主流となっています。そのような状況の下、拝金主義やモラルの低下による事件も起こっています。
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