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【漢方薬と西洋医】VOL.2
●ネット販売している「蟻力神」
昨年末、それを裏付ける大事件が遼寧省審陽市で起こりました。蟻力神天璽グループが高配当保証を歌い文句に、低所得者を中心に200億元(約3,000億円)近い投資金額を集めたまま倒産し、これに激怒した投資家たちが大規模なデモを起こしたのです。投資家が騙された商品は「蟻力神」と言う蟻のエキスから作った漢方薬で、精力増強に絶大な効果があると宣伝し、その原料となる黒翼刺多蟻の養殖事業への投資を募ったのです。被害を拡大させた原因に、共産党幹部や著名タレントを頻繁にメディアやCMに登用させたことが挙げられます。
ところが蟻力神はアメリカ食品医薬品局(FDA)の検査でクエン酸シルディナフィルが含まれた偽バイアグラと公表され、輸入・販売が禁止されました。つまり、薬事法違反の薬を「国家が認可している漢方薬」として消費者を欺いた詐欺事件だったのです。ところが、中国では公害被害を理由に国を訴えても、行政利益が優先される傾向にありますので、まず訴えが受理されるコトはありません。それどころか、ヘタすれば死刑や無期懲役などといった無茶苦茶な判決もあり得ますので、泣き寝入りする事例が多いようです。この辺りが中国という国が三権分立せず、司法が全く機能していない現状を如実に表しています。結局はデモや暴動という形でしか怒りの矛先を向けることが出来ない訳です。
現在でも、免疫能力を高め、抗がん作用があるとの宣伝文句で、1グラムの価格が金より高い「冬虫夏草」は、チベットなど高山地方にしか生息しない昆虫に寄生するキノコから作ったとされる漢方薬です。さらに、中国政府が唯一公認する抗がん治療薬「天仙系列」は、海外に向け活発に輸出しています。ところが、がん治療のために臨床実験が行われたのか、また薬品パッケージに成分内容や効用・副作用などの表示義務を定めた法律もないことから全く信用することが出来ません。
今こそ、漢方薬の効能や有効性を、客観的、かつ科学的に検証し、良識ある治病求本の精神で望んでもらいたいものです。
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