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【鼻煙壺】VOL.1
●葉仲三作、茶色水晶内畫鼻煙壺
昨年、日本の鼻煙壺コレクターで知られる沖正一郎氏が、自身が所有する鼻煙壺1,200点を東洋陶磁美術館に寄噌したことを受けて、同館で開催された「鼻煙壺−沖正一郎コレクション−」展を拝見してきました。
鼻煙壺とは、嗅(か)ぎタバコを入れるための小さな容器で、英語で「SNUFF BOTTLE(スナッフボトル)」と呼ばれる手のひらに収まる程度の掌中愛玩品です。嗅ぎタバコは、香料などを調合した粉末状のタバコを、鼻孔に擦りつけたり、吸い込んでその香りや刺激を楽しむものです。 その習慣は15世紀末にアメリカ大陸からヨーロッパに伝わり、17世紀には王侯貴族などのあいだで大流行しました。そして17世紀半ば頃、ヨーロッパから中国・明万暦年間へ伝わったと考えられています。
清朝年間の康熙、雍正、乾隆の三黄帝の時代に鼻煙壺の黄金期を迎え、時間を経て次第に民間に普及しました。
鼻煙壺は当初タバコを保管するために、ヨーロッパで使われていた箱形の容器が使われていましたが、中国の湿潤な気候に対応するため、密閉出来る中国オリジナルの壺形容器に変わっていきました。そこから鼻煙壺という名称になりました。
鼻煙壺は一部の例外を除いて殆どが手のひらサイズの大きさで、実用携帯品、かつ愛玩品でした。素材は玉、瑪瑙、水晶、磁器、ガラス、象牙、金属など、非常に多様な技法を用いた精巧な装飾が施され、まさに美術工芸品としての地位を確立しました。とくに宮廷内の工房で製作されたものは、贅沢の極みとも言うべき逸品で、皇帝専用品はもちろんですが、貴族や外国使節への下賜品(プレゼント)用としても愛用さられました。
乾隆年間には刻画が重視され、彫鏤で精細な鼻煙壺は、辛家皮、勒家皮、袁家皮とも称されました。
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