敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【鼻煙壺】VOL.2


●葉仲三作、茶色水晶内畫鼻煙壺

 近年、中国の骨董商やお土産店でも鼻煙壺を見かけますが、筆者が感心する鼻煙壺の彩絵技法「裏画」です。彩絵技法「裏画(内画)」は、通常の鼻煙壺の外側に描く技法ではなく、鼻煙壺の内側に彩絵を施す技法です。 内画鼻煙壺は、昔、地方の小役人が出世しようと首都北京に来ますが、官吏に賄賂を贈らなかったため長期滞在するうち嗅ぎたばこが無くなったため、鼻煙壺の内側についている粉末を削り取ったところ、内側についた数多くの跡が絵のようにも見えたそうで、それを見た僧侶が曲がった竹ベラに墨をつけて鼻煙壺の内側に彩絵を施したのが由来だそうです。
 しかし、鼻煙壺自体は手のひらサイズで、そのさらに内側に筆を用いて彩絵を施すわけですから、相当の技術が要求されます。鼻煙壺画師は竹の繊維などで細い筆を作り、墨や顔料を用いて壺内に文字や彩絵を施します。
 裏画に用いられる鼻煙壺は玻璃や水晶、琥珀などが使われますが、この特殊ともいうべき技法は「中国人民聰明才智的結晶」とも言われ、その達人には、古くは19世紀〜20世紀早期の葉仲三(1869〜1945)、★〔火亘〕文(生卒年月不詳)、周楽元(生卒年月不詳)、馬少宣(生卒年月不詳)などが最も著名な画師です。葉仲三が得意とした竹林七賢下棋、讀書、吹笛、縱歌、飲酒などの情景画は、方寸の世界に広がる最高傑作です。
 しかしながら、光緒年間から民國年間にかけ、北京古物市場において乾隆宮廷内の工房で製作されたとする琺瑯彩鼻煙壺が発見されるなど、毎度のことながらコピー商品も増えています。現代中国では?畫画師は多く、中国全土で約5,000人が?畫大師として従事していますが、相変わらず鼻煙壺は収集アイテムの一つとして人気があり、市価はますます高騰しています。
 今では、鼻煙壷はモンゴルやチベット、中国の一部で実用されてはいますが、大半は美術品としてコレクターに珍重されています。書道家や篆刻家でしたら、落款や印のある鼻煙壺もありますので、学書の対象になるかもしれません。

★…偉の人偏をこざと偏(ネ)