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【酒と漢詩】VOL.2
●唯一現存する李白の真筆(北京故宮博物院所蔵)
現存する李白の詩は1,050首ありますが、うち170首が酒に関するものだそうです。同時代を代表し、李白の11歳年少であるにもかかわらず友人でもあった詩聖・杜甫(工部)は、「飲中八仙歌」のなかで「李白は一斗の酒を呑む間に詩を百篇創る」と讃えています。唐代・陶渕明、宋代・蘇軾に至っては下戸だったにも拘わらず自ら手作りの酒を作っていたことが詩から判明しているほどです。
『漢書』食貨志・下にある「酒百薬長」、つまり酒は百薬の長と言われ、あらゆる薬より酒が一番とされてきました。東晋の陶渕明、唐代の李白、白居易(楽天)など偉大なる詩人は、みな酒をこよなく愛し、酒に纏わる詩を詠いました。いわば酒が詩の源泉であり、酒が詩を創らせたと言っても過言ではありません。実際、飲酒はストレス解消やコミュニケーションが円滑になるなど、プラスの要素が多いことも事実ですが、自分にとっての適量を誤ってはいけません。
貝原益軒「養生訓」では、「酒は微酔にのみ、半酣をかぎりとすべし」とありますが、詩仙・酒仙と称された李白でさえ、自分の適量を誤りました。ある夜、李白は長江に舟を浮かべて酒を呑み、酔って水面に写った月影を捕ろうとして落水、溺死(62歳)したと言われています。
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