敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【木乃伊(ミイラ)】VOL.1

 
●辛追のミイラ(湖南省博物館蔵)

 「木乃伊」と書いて「ミイラ」と読みます。中国語の発音「ムナーイー」から借用したものとされています。湖南省博物館には1972年、長沙市馬王堆漢墓一号墓から出土した西漢長沙国丞相・利蒼の妻・辛追のミイラ(身長154センチ、血液型A型)が保存されています。同時に出土した木簡に「十二年二月乙巳楚朔戊辰」と記されていることから、漢文帝12年(紀元前168年)2月24日に埋葬された事が判明しました。
 このときの出土文物は非常に豊富で、着物、食品、薬剤、漆器、木俑、楽器、陶器、帛画、及び大量の帛書、竹簡、木簡と、考古学上、歴史学上、政治学上、思想学上、この上ない一大発見となりました。
 確認できる史料から辛追死亡は紀元前186年、年齢は50歳前後のようですが、驚くべきは辛追が墓葬から発見された際、普通のミイラとは違い、皮膚表面の艶、筋肉の弾性、毛髪、手足の指紋までもが明確に確認出来るほど奇跡的な保存状態の良さであったことから世界を驚愕させました。
 現在、同館展示室に保存される棺の蓋は開けられていて、上部がガラス張りになっており、辛追のミイラを覗き見ることが出来るようになっています。筆者も直接ガラス越しに真上から見ましたが、気味悪かった思い出だけが残りました。
 次号では、ミイラを商売に利用した人、ミイラ取りがミイラになった話をご紹介しようと思います。