敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【中国酒】VOL.2

 滋養強壮や精力増強のために作られる珍酒には、どう見てもゲテモノとしか言えないようなものが数多くあります。たとえば「雪蛤大補酒」はガマガエルをお酒に浸けたものです。とくに冬眠寸前のガマガエルは脂肪たっぷりなので、お酒に融けたガマガエルのエキスが活力につながるのだそうです。
  「至宝三鞭酒」は鹿と狼とオットセイの睾丸をお酒に浸けたもので、精力増強につながるのだそうです。その他にも「虎骨酒」は虎の骨を、「雄蛾酒」は雄の蛾を、「蚕沙酒」には蚕のフンをお酒に浸けています。
  「紫酒」は乾かしたニワトリのフンをお酒に浸けています。いくらお酒の好きな人でも、ちょっと考えたくなるような珍酒が中国には実在するのです。
  さて筆者お勧めのお酒についてお話いたします。冒頭で述べました紹興酒は、五年寝かせたものを陳年酒と呼びます。昔から中国では(とくに地方では)一家に女の子が生まれると紹興酒を甕(かめ)にいれ、家の庭に埋めたのです。その子が結婚を迎えるのが大体20年、つまり20年寝かせたこの紹興酒は「女児紅酒」と呼ばれ、最高級酒の一つとされています。
  娘が嫁ぐ日を祝って皆で呑んだり、売ったお金で嫁入り道具を買ったりと、非常に珍貴なお酒なのです。残念ながら日本国内でも多くのニセモノが出回っておりますが、ホンモノを呑んだことのある方は、間違いなくこのお酒のトリコになったはずです。まるで高級ブランデーのようにまったりとした上品な味わいには、両親の娘に対する愛情と送り出す寂しさがブレンドされているかのようです。
  色気より食い気の私としては珍しくセンチメンタルなことを書いてしまいましたが、中国料理と紹興酒の相性は最高であることをつけ加えておきます。 ただしこの女児紅酒、思った以上に値段が高いんですねえ。高級中国料理店に行けば女児紅酒は置いていると思いますので、是非フトコロ具合の良い時か、またはお金持ちのスポンサーが一緒の時に思い切って試してみてください。