敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【散歩逍遙】VOL.2


●蘇軾とその真筆『寒食帖』(台北故宮博物院蔵)

 そのような現代では、散歩そのものが実に優雅で贅沢な生活習慣に思えてきます。表題「散歩逍遥」の逍遥とは、「心を俗世間の外で遊ばせること、悠々自適に楽しむこと」ことです。また蘇軾の話に戻します。
 蘇軾は唐宋八家文の一人として有名なことはみなさんもご存知だと思いますが、儒教、仏教、道教の3つの宗教哲学や、気功に至るまで造詣が深いとする説もあり、実際に蘇軾が作った詩にその一端がうかがえます。「海棠《寓居定惠院之東雜花滿山有海棠一株土人不知貴也》」の一節に、「先生食飽無一事、散歩逍遙自捫腹」とあります。
 訳しますと、「食事が終わったら何もせず、しばらく散歩逍遙して常に腹が空になるように努めよ」と言っています。続いて、「空腹になったら静かな部屋に入って座禅せよ」と続けています。  
 そして最後に、「眼力を養うには平生眼を閉じ、聴力を養うには平生聞くことを避けよ。心気を養うには平生沈黙することだ」と結んでいます。不摂生に加えて運動不足、さらに暴飲暴食の末路にメタボリック症候群になられた御仁は、三寒四温のこの時期、蘇軾の提唱する「倹約と養生」を少しは見習い、健康で平穏な毎日をお過ごしいただくようお祈り申し上げます。