敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【画像石】VOL.1


● 茅村漢畫像石墓室内写真

 画像石とは、前漢半ばから後漢にかけて一大ブームと言っていいほど盛んに制作された画像石墓の石刻芸術を指します。1980年以降、多くの銘文を持つ両漢(前漢・後漢)時代の画像石が出土したことは、歴史、考古はもちろん、芸術、書法界にも大きな影響を与えました。
 当時の権力者たち、とくに地方豪族が埋葬された墓は、地下に作られた宮殿とも言うべき墓室、もしくは地上に作られた祠堂が中心でした。それらの壁面を飾ったのが画像石ですが、死後の世界が現世と同じように存在するという死生感があったこの時代には、様々な図像で墓室内を装飾しました。残された遺族、とくに息子など後継者たちが、「親孝行ぶり」を世間に示すため、また道徳に照らし合わせた立派な人間であることを示す必要がありました。
 この背景には前漢武帝が国策にした「儒教」精神があるのですが、役人への登用が推薦制だったこともあり、後継者たちは親の墓作りにせっせと励んだのです。
 山東省の武梁祠や、1997年に新出土した徐州漢墓の公表された写真などを見ると、画像石に刻された内容は、死者が赴く死後の世界にあるとされる崑崙山、三皇五帝や聖帝の肖像画、孝行物語、車馬出行、音楽、舞踏など様々な図象が見受けられます。これら漢代画像石の構図は、司馬遷が五帝から前漢までの歴史をまとめた「史記」の世界と一致すると主張する研究者もいます。
 次号では漢代画像石の書籍、拓本などの資料紹介もしたいと思います。お楽しみに。