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【空巣老人】VOL.1
● 孤独な老人を作ってはいけません
少子高齢化の波が一気に進む中国社会では、全人口のうち65歳以上の老人が占める割合が、オリンピックの開催された2008年には8.3パーセントでしたが、最近の60歳以上の高齢者データを探してみると、全人口の約12パーセント、すなわち日本の人口より多い約1億6,000万人に達しています。これが2050になると、全人口の25パーセントを高齢者層が占めると予測されています。現在、中国国民の平均寿命は一気に延び、完全に老人大国になりつつあります。しかも日本より老人を敬い、大切にするという習慣が残っていますから、まだ暫くは平均寿命が延びると思われます。
さて、中国では実際に少子高齢化問題によって起こる様々な社会問題が表面化しています。とくに農村部においては、「空巣老人」と呼ばれる現象が起こっています。空巣老人と聞いて、「空き巣をする老人」と勘違いしないでください。これは、雛が成長して素から飛び立った後、親鳥だけが残された状態をたとえるために用いられた造語であり、子供が都会部に出稼ぎに行ってしまい、親や祖父母との接触時間がなくなり、夫婦、または老人だけが暮らす農村部の家庭のことを指します。つまり、「独居老人」のことを指します。日本でも親子間の断絶は珍しくありませんが、中国では孤独に耐えかねた一人住まいの老婦人が、来訪を求めて裁判所に訴えたケースがあるほどです。
中国では男女平等が原則ですし、日本のようにお嫁さんが老人を看て当たり前ということはありません。同居していて看病が必要になると、夫婦のうちどちらかかが仕事を休んだり、退職しなければならないため、老人たちは若者へ迷惑をかけることを心苦しく思うわけです。少子化の影響で孫の数もすくなくなり、孫を世話する至福の時もすぐに過ぎてしまいます。さらに、子供を都会で働かせることを苦にして心的病気になる老人がいたり、子供が孫を置いたまま都会に出て数年も帰郷しないケースもあり、"隔代教育"の苦労をする老人も多いそうです。
次号では訪問介護やボランティの実態にも触れてみたいと思います。
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