敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【銅鏡】VOL.1


●左から「方格規矩鏡」「海獣葡萄鏡」国宝「内行花文鏡」

 鏡と言えば日常生活において、とくに女性にとっては必需品と言えるでしょう。我々現代人が使う鏡といえば、ガラスの裏面に水銀を塗って反射するように加工した「ガラス製鏡」ですが、中国において西洋のガラス製鏡が伝来普及し一般的に使用されるようになったのは20世紀初め、つまり清末民初になってからです。それまで中国人が使っていた鏡は青銅製で、表面を研磨することで映るようにしたものでした。
 歴史・考古学用語の「鏡」は、中国、朝鮮、日本の遺跡から発掘される「銅合金製」、つまり青銅製の鏡のことを指します。これまでに発見された青銅鏡で最も古いものは殷代に作られた円形の銅鏡で、それには紐を通すためのつまみ「鈕(ちゅう)」があり、裏面には幾何学紋様がありました。戦国時代になると銅鏡の製造技術は進歩し、複雑で緻密な装飾紋様、方形の銅鏡も作られるようになりました。古代中国製の銅鏡には、神像と動物紋様を鋳出した神獣鏡が多く、その他、背面の文様によって「方格規矩鏡(ほうかくきくきょう)」「海獣葡萄鏡(かいじゅうぶどうきょう)」「内行花文鏡(ないこうかもんきょう)」などさまざまな形式に分類されています。用途としては、現在使われている鏡のように単純に物の姿を映し出す道具としてではなく、祭祀・呪術用の道具として用いられました。
 多民族が統一され、国力が強大となった漢代になると、封建国家としての勢いを強め、経済は繁栄しました。それとともに銅鏡は大型・重厚化され、円形、方形、さらに花弁形などが新たに作られるようになりました。特筆すべき特徴として裏面に鏡銘(きょうめい:文字)が鋳込まれるようになったことです。選ばれる文句は漢代・未央宮の繁栄、長生、太平を願う吉祥文句が多く、書体も篆書・隷書など書家の学書の対象となるものばかりです。