敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【夏の風物詩】VOL.2


● 今度はパジャマおばさんたち

 一方、上海では経済改革が始まったこの30年前から、パジャマ姿で外出するおじさん・おばさんが問題となっていました。一部の市民が豊かになり、パジャマを購入するゆとりが持てるようになったためで、当初、パジャマは裕福さの象徴であり、それを着て外出することは近所に自慢する意味合いもありました。
 1990年代になり、上海当局はパジャマ姿で外出しないよう呼び掛ける啓発活動を行ったものの、その時は上手く浸透しなかったのですが、契機となったのはやはり上海万博でした。
 上海市が「市民の素養」と題したルールを制定、パジャマ姿を「非文明的な視覚公害」と呼び、市の恥だと一大キャンペーンを行い、長年の習慣をやめさせようと躍起になって取り組みました。そう言えば、街中に「万博を通じて文明人に」といった看板を見かけました。
 当初は「面倒臭い」や「国が服装にまで口を出すのか」という反発もありましたが、キャンペーンや報道の効果があり、こちらも見かけなくなっていました。ところが、以前ほどではないにしても、筆者が訪中した六月末にはパラパラと見かけました。こういうのは10年単位で取り組むべきことなのでしょうか。
 経済成長で大躍進を遂げる中国へのやっかみを除いたとしても、裸のおじさんやパジャマ姿のおばさんはだらしなく見えてしまいます。北京政府や上海市の指導の賜物か、国際化が進むにつれて、街中を歩く膀爺やパジャマ姿のおばさんたちの姿も消えゆく文化と言えるのでしょうか。ただし、マナーや道徳の問題を、法律や行政命令で規制したり、法律があっても道徳基準や人脈で捻じ曲げてしまう。
 この「法律」と「道徳」の混同は、中国最大の問題だと思っているのは筆者だけでしょうか。