敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【人心喪失】VOL.1


●世界を震撼させた監視カメラ映像

 昨年10月13日(木)、広東省仏山市の出稼ぎ労働者が集う「広佛国際五金城」にある、一台の監視カメラが捉えた映像は、世界中に波紋を投げかけました。おぼつかない足取りで道路を歩く王悦ちゃん(通称・悦悦ちゃん、2歳)を通りかかったワゴン車が跳ね飛ばして逃走、続く軽トラックも後輪で乗り上げそのまま逃走してしまいました。
 衝撃的だったのは、この事故現場を通りかかった18名もの通行人が次々と倒れている悦悦ちゃんを一瞥しても無視して通り過ぎて行ったのです。最終的に19番目の通行人となった廃材拾いの女性・陳賢妹(58歳)が悦悦ちゃんを路肩に運び、救助を要請しましたが、可哀想に8日後に病院で死亡してしまいました。
 この映像は安徽省の南方テレビが報じたものを上海のテレビ局が再放送して世界中に広がりました。何故、通行人が助けなかったのかについて、当初は、2006年に南京で男性が倒れている高齢女性を助けようと車を停止させたところ、女性は男性の車にはねられたと主張し、男性は裁判所から賠償金45,000元(約55万円)の支払命令を受けた事件があったとしていました。
 その後、世論の批判が高まり、二審で和解が成立したそうですが、その条件などは明らかされていません。この事件によって、「自分も見て見ぬふりをしてリスクを避けるかもしれない」という風潮を生みだしました。
 メディアは悦悦ちゃん事件をきっかけに、年老いた親を施設に預けたまま面会にも来ない若者や、道で倒れている老人を無視して通り過ぎるといった現象をクローズアップし、「中国人の道徳心の喪失」というキャンペーン化を展開しました。
 次号では、なぜ、現代に生きる中国人がこのようなモラルハザードになってしまったのかについて、お話ししたいと思います。