敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【人情奴】VOL.2


● 不愛役人の大好きな酒池肉林

 さて、中国一般庶民の付き合いとしては、おもに拝年(お正月の相互訪問)、圧祟銭(お年玉)、誕生日、結婚式、葬祭、出産、満月(生後1カ月)、満1歳(生後1歳)、開店、新築などが挙げられます。親族、親戚、友人であれば一定の現金や、慣習としてお菓子、砂糖、肉、鶏、卵などの実物を贈り、受け取った側はお返しをします。
 しかし、中国では日本以上に血縁関係や地縁関係が重視され、身内「自己人」、それ以外を「外人」として厳しく区別します。一族で不測の事態があれば、可能な限りの経済的支援をするのは当然と考えます。そこで、この両者「自己人」と「外人」の中間に位置する関係、つまり親密な関係を構築すべく対象として「熟人」が重んじるようになりました。
 熟人には中国人の遺伝子に組み込まれているとも言うべき「面子」が如何なく発揮され、「贈り物」や「現金」などの賄賂、「お世辞」や「敬意」が払われますが、このような「社会的資源」の交換は、現代中国では日常的に行われており、資源を送る側は回報(見返り)を期待します。このようにして交際費の収入に占める割合が増える仕組みになったようです。実際、現代中国ではコネがなければ何もできないと言われるほどで、付き合いの多くは、「コネをつくる、コネを維持する、コネを深める」ために費やされているのです。
 交際費が嵩むと経済的負担はますます増えてしまいますが、その結果として、権力のある人物との関係を構築するための努力を惜しむことができなくなるようです。そして実権を握る官僚たちはどんどん私腹を肥やすわけです。人情と贈収賄の境界線は、もともと曖昧なものですが、あくまで「人情に過ぎない」と自己弁護する権力者、腐敗官僚が後を絶ちません。
 いずれにせよ、高官が禁断の愛欲・物欲に溺れて汚職に走るとは、まさに救い難い「世紀末中国」の現状と言えるかもしれません。