敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【科挙】VOL.1


● 金榜

 中国では例年、6月の2日間、900万人を越える受験生が臨む大学統一入試が行われるのですが、この試験はあまりに厳しい受験競争を象徴する試験であることから、「現代の科挙」とも呼ばれています。就職難が深刻な状況となっている現代中国では、学歴偏重の風潮が強まっていて、両親・祖父母を巻き込んだ「お受験戦争」が年々激化しています。
 以前もご紹介しましたが、受験ビジネスとしてカンニング用具の開発・販売も公然と行われていて、最近では、回答をメールで受信出来るボールペンな定規といった「ハイテクカンニンググッズ」も売られているそうです。そのため一部の受験会場では、公正を期するため、受験票と身分証以外の会場持ち込み禁止や、筆記用具の貸与といった措置を取るケースも出ているようです。
 隋代・文帝の587年から1905年に廃止されるまで、1,000年以上続いた官使登用試験・科挙ですが、役人天国と言われる昔の中国において、官使になることはこの上ない名誉であり、男と生まれた以上、官使は人生の目標とも言うべき職業でした。
 また、科挙は役人・政治家になるための登竜門でもあり、合格はすなわち立身出世の約束手形とも言うべきものでした。
清代・杜文瀾の「古謡諺」に、
  久草逢甘雨
  他郷遇故知
  洞房花燭夜
  金榜掛名時
と謳われる通り、官僚・政治家は同時に詩人でもあり、文学の理解をも要求されました。
 次号では科挙に苦しめられた中国詩人をご紹介します。